
日が暮れる。父は小屋に向かう。麻雀牌にベビーパウダーをまぶし、夏場は長い時間やっているうちに牌と牌が汗でくっついてしまうからで、直行が赤ん坊のころ汗疹やおむつかぶれにはたかれたのと同じ粉だった。夜になると父たちは庭のプレハブに集まり麻雀をしていた。おれはいつもじっと見つめていたが仲間に入れてはもらえなかった。それはおれが子どもだったからってだけではなくきっと何かが足りなかった。もしもあのときルールを教えてもらっていたら、男たちにもっと懐いていたら、おれにはもっと別の人生があったのか?
自立やコンプレックスの話を書こうとしたら、セクシュアリティの話になった(気がする)。3万字くらいの短い小説です。
カバー(造形製作):えも
文庫版/72ページ